新従業員の退社が決まったら、会社側では様々な退社手続きが発生します。多くの手順を踏み、正確かつ円滑に行わなければならない入社手続きに負担を感じている方は少なくないはずです。事前に従業員側と会社側、それぞれがやるべきことを把握し、スムーズに対応できるようにしましょうこの記事では、「自己都合退職」を前提に退社手続きの大まかな流れや必要書類、対応のポイントについて解説します。1. 会社側 退社手続きの基本的な流れ会社側が行う一般的な退社手続きの基本的な流れについて紹介します。主な手続きの流れは下記の通りです。退社届の受理貸与物や健康保険証の回収社会保険の資格喪失手続き雇用保険の資格喪失手続き所得税、住民税関連の手続き離職票や源泉徴収票の発行・郵送(1)退職届の受理従業員から退社の申し出があり、具体的な退社日が決定したら退職届を提出してもらいます。退職届には、退社日、退社理由、最終出勤日などの情報を表記してもらいます。退社日は、業務に支障が出ないよう、残っている年次有給休暇の取得についても話し合った上で決定することが重要です。また、転職による退社の場合は、転職先の入社日に留意しましょう。退社後の住所や連絡先などもあわせて確認しておきましょう。(2)貸与物や健康保険証の回収退職届が受理されたら、退社日までに従業員から貸与している物品や健康保険証を回収する必要があります。返却してもらうものをあらかじめ伝えておきましょう。健康保険証(本人分、被扶養者分)従業員カード(パスカード等)鍵値札PC、携帯電話名刺(未使用分の回収、または処分)、顧客の名刺(必要に応じて回収) など (3)社会保険の資格喪失手続き従業員が退社する際に会社側が「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届(資格喪失届)」を提出する必要があります。従業員の退社日の翌日から5日以内に「資格喪失届」を事務センターまたは管轄の年金事務所、健康保険組合に提出してください。健康保険資格喪失届の提出の際は健康保険被保険者証(本人分および被扶養者分)が必要になりますので回収し忘れがないようにしましょう。任意継続制度について資格喪失日(退社日の翌日等)の前日までに継続して2ヵ月以上健康保険の被保険者期間がある退職者は、健康保険の「任意継続制度」により2年間利用ができます。 資格喪失日から20日(20日目が土日・祝日の場合は翌営業日)以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を健康保険組合等に提出する必要があるため、任意継続希望の有無を事前に確認をしておきましょう。(4)雇用保険の資格喪失手続き従業員の退社日の翌日から起算して10日間以内に管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。退社した従業員が、失業手当を受けるための重要な手続きとなっています。 (5)所得税、住民税関連の手続き住民税の納付方法は「普通徴収」と「特別徴収」の2種類あります。特別徴収」は会社が従業員の給与から源泉徴収して納付するもので、「普通徴収」は個人が支払うものです。退社後に転職が決まっている場合は、新しい勤務先で「特別徴収」を継続することができます。その場合、転職先で「給与所得者異動届出書」の提出が必要になりますので書類を作成し本人経由で転職先企業に渡しましょう。転職先が決まっていない場合は、「普通徴収」となります。この場合は、従業員の退社日の翌月10日までに「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を対象従業員の住民税を納めている市区町村に提出する必要があります。届け出をすることで、従業員本人宛に住民税の納付書が郵送されますので、ご自身で住民税の納付をしてもらいます。また、1月から4月末の間に、従業員が退社する場合は、5月までの未徴収分を一括で徴収します。但し、退社時点で支給される給与や退職金額によって「一括徴収」ができない場合は、普通徴収となります。退社時に住民税を納めている市区町村と、退社した年の1月1日時点に居住している市区町村が異なる場合は、それぞれ手続きが必要になりますので、注意が必要です。転職状況により、手続き方法が異なるため早めに確認しておくのが良いでしょう。 (6)離職票や源泉徴収票の発行・郵送退社後速やかに、離職票、源泉徴収票の発行・送付をする必要があります。離職票は、会社が提出した「離職証明書」を基に、ハローワークが退職者に対して交付する書類です。失業手当を受けるときや、年金・健康保険の手続きを行うときに必要になる場合があるため、離職票が会社に届き次第すぐに従業員に送付しましょう。源泉徴収票は退社した年の1月1日から最終支払給与・賞与までの額で発行します。退社した従業員が同年内に転職する場合は、その収入を合算し、転職先の会社が年末調整を行います。退社する従業員に対しても、就職先に源泉徴収票を提出する必要がある旨を伝えましょう。同年内に再就職しない場合は、年末調整がされないので、自身で確定申告の手続きが必要になる旨を伝えましょう。 2. 会社側 退社時の必要書類と手続き3. 退社手続きにおける注意点退社手続きにおける注意点は下記の3つです。個人情報の取り扱い雇用形態手続きが多いのでタスク漏れに注意(1)個人情報の取り扱い従業員の個人情報は、厳格に管理されなければなりません。退社手続きにおいても、プライバシー保護に最善の注意を払いましょう。個人情報の適切な取り扱いは、法的な要件を満たすためだけでなく、信頼性の証ともなります。情報漏洩を防ぐため、機密性が高いデータにアクセスできるのは関係者に限定し、セキュリティ対策を強化しましょう。 (2)雇用形態従業員の雇用形態によって、退社手続きが異なることがあります。正社員、契約社員、パートタイム労働者など、雇用形態ごとに異なる要件があるため、適切に対応することが必要です。雇用形態に基づいて、必要な手続きと書類提出方法を明確に伝えましょう。 (3)手続きが多いのでタスク漏れに注意退社手続きには多くの業務が発生します。その上、退職者や関係各所との連携が必要になります。タスク漏れを防ぐために、チェックリストやテンプレートの活用が重要です。退職者が使用していた社内システムのアクセス権限の削除なども忘れずに行いましょう。手続きに漏れや不備があると、従業員に不利益やトラブルが生じる危険性が高まります。従業員に対するサポートの強化、会社のコンプライアンスを維持するために、手続きの進捗状況を把握し、完了済みのタスクを確認しましょう。 4. 退社手続きをスムーズに進めるポイント退社手続きをスムーズに進めるためのポイントと具体的な方法を解説します。退社手続きをスムーズに進めるポイントは、下記の3つが挙げられます。タスクのテンプレート化(標準化)チェックリストの作成手続きツールの利用(1)タスクのテンプレート化(標準化)退社手続きをテンプレート化し、ルールを設けましょう。具体的なステップや担当者を明確にし、手続きのスムーズな進行を確保します。そうすることで毎回タスクを洗い出す必要がなくなります。機微情報を多く扱いますので、アクセスできる従業員・部署を特定するなどのルールも設けておきましょう。ステップやルールをテンプレート化することで担当者しか把握できなかった属人化している業務の流れを誰でも簡単に管理できるようになります。 (2)チェックリストを作成するタスクを整理し、進捗を確認するためのチェックリストを作成しましょう。チェックリストは、漏れがないか確認するための有効なツールです。退社手続きの過程で何が完了したか素早く確認できます。 (3)手続きに特化したサービスを利用退社手続きをより効率的に進めるために、手続きに特化したサービスを検討しましょう。弊社が提供する「mfloow(エムフロー)」は、入退社や異動、産休・育休など、従業員が働く上で発生する従業員の「ライフサイクル手続き」を一元管理できるクラウドツール(SaaS)です。手続業務で発生しがちな「タスク漏れによる遅延」「連携ミス」「業務の属人化」を防ぎ、シームレスな情報の共有と蓄積を実現し、タスク管理に伴うストレスからの解放を目指しています。5. まとめ会社側が行う退社手続きは、従業員と会社の双方にとってとても重要です。入社手続きは、タスクの量が多く、期限が決まっているものもあるのでスムーズに進めることが求められます。従業員のスムーズな退社をサポートするために、退社手続きの基本的な流れ、必要書類と手続き、注意点、スムーズな進行のポイントを理解し、適切なサポートを提供しましょう。退社手続きを効率的に管理することで、安定した組織の継続運営に繋がります。